■東大数学入試問題はやさしくなったのか
中間報告としては、2016年以前に比べて、「難問の出題頻度は下がっているのではないか」と思っています。難易度・計算量ともに、従来よりは下がっているようです。確認のため、下記の分析を始めました。
○苦手な女子に配慮?東大入試で数学がやさしくなったと評判
(抜粋、2017年)
今年の東大入試の特徴の一つは、理系合格者の平均点や最低点が前年より大きく上がったこと。平均点を前年と比べると、理I、理II、理IIIのいずれも20点前後上がった。文I~文IIIが1~2点の上昇にとどまったのとは対照的だ。上昇の理由は前期入試の数学が前年よりやさしくなったから、と指摘される。
理Iに合格した女子生徒は「数学でこんなに点を取れるなら、理III(医学部)を受ければよかった」と話した。
易化の理由について、一部の予備校関係者からは「数学が苦手な女子生徒が入学しやすいようにしたのでは」との声もある。東大が女子学生比率を2020年までに30%にするとの目標を掲げているからだ。
ただ、推薦入試と前期入試を合わせた合格者計3083人のうち、女子は609人。前年より23人増にとどまった。合格者に占める女子比率も0.9ポイント増の19.8%。駿台教育研究所進学情報センター長の石原賢一さんは「数学の易化は偶然でしょう。来年の難易度は予測できない」と話す。
(苦手な女子に配慮? 東大入試で数学がやさしくなったと評判 2017/03/16より抜粋、https://dot.asahi.com/articles/-/111458?page=1)
○東大行動シナリオ: 2020年までに学生の女性比率30%の達成を目指す。
https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400010045.pdf
○ダイヤモンド・オンライン他の分析
実際には、東京大学の女子学生の比率は20%前後であり、2024年度の一般選抜では19.4%でした。ただし、2016年度から始まった推薦入試では女性比率は40%前後と一般入試よりは高くなっています。
●難易度の分析
当サイトでは、難易度をおおまかにABCDEの5段階に分けてきましたが、今後は評価を次のように精緻化します。
A:教科書レベルのやさしい問題
B:受験テクニックレベルのやさしい問題
C:通常の受験テクニックレベルでは難渋する問題(Bレベルの難問も含む)
D:通常の受験テクニックレベルでは解けない難問
E:超難問
なお、「通常の受験テクニックレベル」とは、当サイト「■大学数学 入試問題解説 分野別目次」で解法を解説しているレベルです。
東大入試数学問題の平均点や最低点の推移のデータを探しても見つからないので、過去10年の入試問題の難易度を、当サイト独自の判断で評価し、年度推移を調べてみました。
難易度全体には大きな変化は見られないのですが、高難易度の問題が減少していることは現れたようです。2017年以降、文科では難問と思われる問題は出題されていません。理科では大きな変化はないのですが、難問と思われる問題の出題頻度は少し下がっているように思われます。
ということは、合格に満点を取る必要はないので、あえて難問レベルの満点狙いは放棄し、そこは部分点で我慢して、受験参考書レベルの応用問題をじっくり学ぶことが最善でしょう。それでも実際の問題には挑戦したいと思うので、直近7年+2025年入試問題の全問と補充問題を収録した、当塾独自の問題集の作成を始めます。分野ごとに整理しなおし、関連性も解説した、京極一樹流の解説本です。
●2017年以降の東大入試問題
○2024年
文科第1問 [B] 円と接する放物線とx軸が囲む値域の面積の問題
文科第2問 [C] 対数を使って解く指数の整数問題
文科第3問 [B] x軸上の2点を見込む角を使った面積の問題
文科第4問 [B] 円内接多角形から構成する四角形が中心を含む確率の問題
理科第1問 [C] 2つの空間角が作る空間の断面図形の問題
理科第2問 [B] 絶対値記号付き積分の応用問題
理科第3問 [C] 座標上の対称移動に関する確率漸化式の問題
理科第4問 [B] 放物線に接する円の数の判別の問題
理科第5問 [B] 三角形をx軸の周りに回転した立体の体積の問題
理科第6問 [D] nの3次式が素数となる整数nの個数を求める問題
○2023年
文科第1問 [B] 2次方程式の実数解の対称式の値域の問題
文科第2問 [B] 物線と直線の距離の積分に関する問題
文科第3問 [B] 12個の玉に関する確率と条件付確率の問題
文科第4問 [B] 球面内の面積と体積の問題
理科第1問 [C] 積分の極限値の問題
理科第2問 [B] 2個の玉に関する確率と条件付確率の問題
理科第3問 [C] 計算が難しい放物線の弦に関する問題
理科第4問 [B] 空間ベクトル問題
理科第5問 [B] 整式の剰余の問題
理科第6問 [C] 立方体と球に関する体積積分の問題
○2022年
文科第1問 [B] 2次関数に接する直交する接線に関する問題
文科第2問 [B] 3次関数の法線に関する問題
文科第3問 [B] 漸化式と剰余の問題
文科第4問 [C] ベクトルの回転と確率の問題
理科第1問 [B] 微積分計算問題
理科第2問 [C] 漸化式と剰余の問題
理科第3問 [C] 図形に関する応用問題
理科第4問 [C] 3次関数と相異なる3点で交差する直線の通過領域の問題
理科第5問 [C] 円錐表面上に頂点を持つ円錐が通過する領域の体積の問題
理科第6問 [C] ベクトルの回転と確率の問題
○2021年
文科第1問 [B] 3次関数と円の共通点に関する問題
文科第2問 [B] 2N個の整数からN個の整数を選ぶ問題
文科第3問 [C] 2つの放物線どうしの交点・曲線の領域の問題
文科第4問 [C] 整数の剰余のやや難しい問題
理科第1問 [C] 2つの放物線どうしの交点・曲線の領域の問題
理科第2問 [C] 複素数図形の問題
理科第3問 [B] 分数関数の微積分融合問題
理科第4問 [C] 整数の剰余のやや難しい問題
理科第5問 [C] 導関数だけで最大値を与える変数の範囲を求める問題
理科第6問 [B] 整式の性質の問題
○2020年
文科第1問 [B] 放物線に関する格子点問題
文科第2問 [C] 16個の点の選び方の問題
文科第3問 [B] 放物線と領域の問題
文科第4問 [B] 漸化式のやや難しい問題
理科第1問 [B] 2次方程式に関する論証の問題
理科第2問 [B] 三角形の面積に関する問題
理科第3問 [B] 媒介変数曲線を回転した面積の問題
理科第4問 [B] 漸化式のやや難しい問題
理科第5問 [C] 円錐と斜円錐が合体する体積積分の問題
理科第6問 [D] 楕円の法線を4本描く領域の問題
○2019年
文科第1問 [B] 正方形の中の三角形に関する文系微分の問題
文科第2問 [B] ベクトルがあらわす領域の問題
文科第3問 [C] 正八角形の頂点を移動する確率の問題
文科第4問 [B] ベクトル和の終点の領域を示す問題
理科第1問 [B] 置換積分で解く関数の積の積分問題
理科第2問 [B] 正方形の中の三角形に関する文系微分の問題
理科第3問 [D] 八面体を平面で切る空間ベクトルの難問
理科第4問 [C] 2つの整数の積が整数の2乗にならないことを示す問題
理科第5問 [C] 中間値の定理と極限の問題(2019年東大理科5)
理科第6問 [D] 4次の実数係数方程式の解の問題
○2018年
文科第1問 [B] 2次関数と不等式領域の問題
文科第2問 [B] 組合せ記号に関する整数問題
文科第3問 [B] 3次関数の振る舞いに関する問題
文科第4問 [B] ベクトルの軌跡・領域と面積の問題
理科第1問 [B] 関数の挙動を調べる問題
理科第2問 [C] 組合せ記号に関する整数問題
理科第3問 [C] ベクトルの軌跡・領域と面積の問題
理科第4問 [B] 3次関数の振る舞いに関する問題
理科第5問 [C] 複素数と図形と方程式の融合問題
理科第6問 [C] 移動する球の共通部分の体積の問題
○2017年
文科第1問 [B] 2つの放物線が囲む領域の面積比の問題
文科第2問 [B] ベクトルの内分点の応用問題
文科第3問 [C] 格子点上の移動の確率の問題
文科第4問 [B] 背理法と数学的帰納法で証明する数列の問題
理科第1問 [B] 三角関数多項式の最小値の問題(2017年東大理科1)
理科第2問 [C] 格子点上の移動の確率の問題
理科第3問 [B] 複素数平面上の写像の問題
理科第4問 [B] 背理法と数学的帰納法で証明する数列の問題
理科第5問 [B] 2つの放物線の共通接線の問題
理科第6問 [C] 円錐を回転させた立体の体積の問題